「きらきらの夢に向かっていくような、星を散りばめた靴」 詩羽 × 坂部三樹郎:対談
2021年水曜日のカンパネラ二代目ボーカルとしてデビューした詩羽。以来彼女は、音楽、ファッション、ヘアスタイル、メイク、全身全霊で自分のありたい姿を表現し続けている。2024年3月には武道館単独公演、初のフォトエッセイ上梓。カルチャーアイコンとして唯一無二の輝きを放つ詩羽に、コラボシューズに込めた思いを聞いた。
ー詩羽さんの過去のファッションやスナップを拝見すると、特に靴にこだわりを感じます。詩羽さんにとって靴ってどんな存在ですか?
詩羽:自分のファッションを生かすためのものですね。好きな洋服を着るために色々な靴を履くようになりました。私は、身長が152センチしかなくて平均よりはちょっと低めの身長なんです。だからそれに合わせて厚底のものを履くことが多いです。もう家にあるのは、ほとんど厚底っていうぐらい。ソールにボリュームがあったり、デザインがあったりするものがほとんどですね。
ーgroundsの靴もコラボする以前から、詩羽さんが履かれている印象があるんですけど、もともと愛用されていたんですか?
詩羽:そうですね。コラボする以前から知ってましたし、友達と展示会に行ったのがきっかけでそこから展示会にも呼んでいただけるようになって履くようになりました。
ー坂部さん、詩羽さんに最初にお会いした印象はいかがでしたか?
坂部:まず、詩羽さんのファッションがすごく印象的。「水曜日のカンパネラ」の二代目ボーカルとして活動されてから、本人の印象がすごい前に出てるなと感じていました。実際に会った印象もギャップがないことがすごいと思いましたね。
ー詩羽さんが坂部さんにお会いしてみたときを振り返ってみていかがでしょう?
詩羽:groundsって形やカラー、デザインがすごい派手なものが多いと思うんです。そこが私も好きで、みんなからも支持されていると思うんですが、坂部さんは黒い服を身につけていて、そのギャップが意外でした。
坂部:なんか、恥ずかしくなっちゃいますよ。
詩羽:私、逆に真っ黒の服は着ないので。
坂部:落ち込んでる日も大丈夫ですか、派手な服で。
詩羽:落ち込んでる日こそ、服でテンションを持っていったりしますね。
坂部:それはすごいっすね。
詩羽:もう真っピンクな服着て、無理やりにでもアゲる。雨の日も明るい服を着てテンションをアゲます。
坂部:ちなみにですけど、風邪引いてる日とかはどうですか?
詩羽:風邪引いて、外に出る日ですか?(笑)
坂部:コンビニにスポーツドリンクとか買いに行くとき。
詩羽:それは、もうグレーですね。
坂部:あ。一応グレーの服もあるんですね。
(一同笑)
ー坂部さんは黒に対する美学をお持ちなんですか?
坂部:いや、全くです。目立ちたくないので黒を選んでしまうというだけ。だからすごい詩羽さんがうらやましいです。
ーだけどgroundsにはご自身のクリエイティビティを反映させていますよね。
坂部:靴が派手なのは、僕の中ではアリなんですよ。
詩羽:その中でもgroundsは本当に特別なものですよね。いろんなスニーカーがある中で、groundsってデザインも形も派手で、これを作ろうとは思わないデザインだと私は思っています。
ー対照的な“色”を身につけているお二人ですがどのようなところからコラボは始まったんですか?
詩羽:コラボしませんか?というお話をいただいて、ぜひという感じで。私も普段から愛用しているし、groundsってすごいアイコニック。洋服が好きな人たちだったら「みんな知ってるよね?」というブランドなのでファッション好きな自分が、groundsとコラボできるっていうのはすごく嬉しかったです。
ー先ほどお話されていた印象という部分にもつながると思うんですが、坂部さんが詩羽さんにお声掛けした理由も教えてください。
坂部:本当に最近は昔よりもファッションでいろんな色を入れたり、派手に着飾るっていうのは難しくなってきてる時代。その中で、(詩羽さんは)象徴的に出てこられたような気がしました。自然にこの形として見られる。そういう人っていうのは珍しいじゃないですか。なので詩羽さんには興味があり、お声がけさせてもらいました。
ーコラボシューズについてもお話伺っていきたいんですけど、詩羽さんがデザインした上でのポイントはどこでしょうか?
詩羽:カラーは、私が大好きなピンクとみんなも履きやすそうな黒の2色展開にしました。みんなにとっては挑戦になるかもしれないけど、ピンクは好きな色なので外せなかったです。アッパーには刺繍、ソールにはステッカープリントで星をたくさんちりばめていただきました。
ー星のモチーフがやはりすごく特徴的だと思うんですが、デザインテーマは何かあるんですか?
詩羽:テーマ的には「夢」ですね。目標としての夢に向かって頑張るために、「進んでいくぞ!」っていう気持ちを足元から込めていきたいと思ってデザインしました。私にとって「夢」のイメージって、きらきら輝く星なんです。星のモチーフがもともと好きっていうこともあって、きらきら輝く夢に向かって一歩足を踏み出すための靴を制作しました。
ー詩羽さんとのコラボシューズ、実際出来上がってみていかがでしょう?
坂部:まず、ちゃんと作り終えてくれてありがとうという感謝をお伝えしたいです。というのも、デザイン全般は大変なことなんですが靴って特に難しいです。知らない方が多いと思うんですが、いろいろなルールや制限が存在するんですよ。その中で詩羽さんがちゃんと作りたいものを作ってくれたっていうことが本当に嬉しいです。
詩羽:ありがとうございます。
ーgroundsの斬新なデザインを見るに坂部さんは実際、靴作りのルールを打ち破っているんですね。
坂部:打ち破ってる方だと思います。だからこそ、詩羽さんも頑張ってやってくれていたのがすごく分かって。難しい中で、いろいろとアイデアを出してくれたのがうれしかったです。苦労した部分がたくさんあると思うけど、最終的にすごくかわいく仕上がっていますよね!
詩羽:はい。かわいいです!
坂部:具体的にはアッパー部分の刺繍は洗練されていて、ソールのステッカープリントはポップさが出てる。いろんな質感が混ざっていて僕がデザインするgroundsとは全く違う仕上がりになっていますね。
ーコラボならではの醍醐味ですね。今回、詩羽さんがデザインするにあたって、最も悩んだり苦労した部分はどこでしょうか?
詩羽:星の入れ方をどうするかっていうのは結構ずっと、相談していました。「夢に向かって頑張るぞ!」っていう気持ちを込めたかったので、星は絶対、入れたい。その上でどう入れるか、というのは悩みました。
ーデザインしていく上で、インスピレーションを与えたものや参考にしたものはありますか?
詩羽:ないですね(笑)いろんなものの知識が、あんまりないタイプなんですが、何もかも知らないからこそ、できることがあると思っています。
坂部:直感?
詩羽:そうですね。何をやるにも怯えずに挑戦できる理由は、知識がないからだと思っていて。デザインは、大学の頃に勉強したことがあったので何となくレイアウトの雰囲気だったりとか、色のバランスだったりとかは、一緒に考えることができたので楽しかったんですけど、何か得たものを反映するとかは今までもなかなかないです。何も知らないからこそ、アイデアが出てくるという感覚。
ー納得です。ガムがくっついたようなソールパーツも、もともとgroundsのインラインでも使われているものだと思うんですけど、それを選んだ理由はいかがでしょう?
詩羽:やっぱり直感で、このデザインが一番かわいいと思ったからです(笑)
坂部:僕もこのデザイン、好きなんです。「ガム踏んだみたいにしよう」って作ったものなんですけど、なんでかは覚えてないです(笑)
ーあらためて今回のコラボシューズをどんな人の手に取ってもらいたいとか、どんなスタイルに合わせてもらいたいというイメージはありますか?
詩羽:今まではこういうデザインやカラーを履いてこなかったけど「挑戦してみてもいいかな」という人に履いてもらいたい。靴ってジャケットとかスカートよりも“挑戦”しやすいアイテムだと思います。足元をちょっと変化させるだけで意外と気付いてもらえたりするし、足元から始めてみたおしゃれがもっとファッションとかいろんなカルチャーを好きになることにつながったりすると思うので。もちろんファッション好きな方にも履いてほしいです。どんなふうに着こなすのか見てみたいです!
坂部:まさに、靴から挑戦するっていうのはすごく良いと思います。僕も履いてみて、メンズも全然履けると思いました。ファッション好きだったら、全然合わせるのは難しくない気がします。特にアッパーが黒ならソールが派手でも、どんな色味でもまとまると思います。そこに星があったりとか、デザインが入っているので久しぶりに会った友達と絶対、靴の話題で盛り上がれますよ。そこが面白いところで、友達以外でもいろんな人のコミュニケーションのスタートになり得る。そういう意味でも“挑戦したい人”におすすめな靴だと思います。
ーまさに詩羽さんがコンセプトに込めた夢の一歩を踏み出してほしいという思いとも繋がりますね。
詩羽:その人にとって、そう思える靴であれたら嬉しいです。
坂部:詩羽さんも、さっきおっしゃっていた通り服とか靴とかで人の気持ちって変わるんですよ絶対。元気なくても、ピンク着たら変わるってのは、すごく本質的。でも実際あまり日常において、そういうところにトライしないで過ごしてしまいがち。普段とは違う一歩を踏み出したいときとか、今とは全然違う所へ向かいたいときとか、何かしら新しい挑戦のときに履いたらきっとパワーをくれる。ぜひトライしてもらいたいです。ファッションが背中を押してくれるときがあるはずです。
詩羽:私自身が、自分を前に進めるためにこういうスタイルにたどり着いた人間なので。みんなに頑張れって言いたいっていうよりは「一緒に頑張っていこうね」って私は世の中に言いたい。その思いをデザインに込めて制作させていただいたので、手にとってくれた皆さんにそれが伝わってくれたらいいなと思いますね。
Photography: Hayato Takahashi
Text: Tomohisa Mochizuki(OMOHARAREAL)
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